陸上自衛隊で働きがいのあるお勧め職種とは?(元自衛官の体験談)

      2020/03/20

陸上自衛隊には現在15の職種(「陸上自衛官の職種に関する訓令」では15種ですが、一般向けの解説では野戦特科と高射特科を分けて16種)があります。

陸上自衛隊における職種は、端的にいえば人事管理と教育訓練を適正にするために区分・指定されているものです。

陸自のHPには…各々の特性を発揮しつつ様々な組み合わせにより各種事態へ柔軟に対処します…。とあるように、究極的には自衛隊が任務を完全に遂行できるようにするために必要不可欠なものといえますよね。

今回は、陸上自衛隊で働きがいあるお勧めの職種とは?と題して元自衛官が体験を通じて感じた2つの視点から説明させて頂きます。

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①自衛隊の任務・行動からの視点

・新たな戦いといわれるハイブリット戦対応の観点から…

「ハイブリッド戦」とは…昨年2018末に策定された防衛計画の大綱によると、軍事力と非軍事力の境界を意図的にあいまいにした現状変更の手法…「破壊工作、情報操作など多様な非軍事的手段や秘密裏に用いられる軍事手段を組み合わせ、外形上、武力行使とは明確に認定しがたい方法で侵略を行うこと」と説明されています。ハイブリッド戦は、いわゆる「グレーゾーンの戦い」と「新領域の戦い」が特徴なんですね。

このような新たな戦いといわれるハイブリット戦が注目され始めたのは、2014年のクリミア危機・ウクライナ東部紛争が契機となったといわれています。

ロシアは、この紛争においてほぼ無血でクリミアを併合、ウクライナ東部地区で影響力を拡大したわけですが、その作戦形態が世界の注目を集めることになりました。


そのロシア軍の作戦の目的、作戦様相の概要については以下の通りです。

<ロシア軍の作戦目的>

①ウクライナ東部地区のロシア系住民の保護・自治権の拡大 ②ロシアのプレゼンス確保及び西側諸国との軍事衝突の回避(このため、ロシア軍は直接的な軍事行動や支援を秘匿する必要があった)

<ロシア軍の作戦様相>

準備段階
①身分を偽装した情報要員をウクライナ反政府組織に派遣し、デモの主導、同組織の武装化・活動計画の作成及び実行を指導監督
②武装勢力に偽装した特殊作戦部隊を派遣し空港占拠等の作戦を実施するとともにウクライナ親ロシア派組織の訓練指導~数か月後には、2個軍団(人員3万、戦車470両、火砲370門)を組織させた。


実行段階
①親ロシア派勢力を鎮圧しようとするウクライナ軍の指揮通信組織網を妨害無力化するなどの猛烈な電子戦
…具体的な例としては、ウクライナ軍の利用するGPSやUAVの誘導電波に妨害をかけ、部隊移動や正確な射撃を困難にしたり、偵察用UAVのコントロールを不能にするなどした。また、ウクライナ軍の無線通信補助手段で使用した携帯電話に偽命令を送信し、準備地域におびき寄せ正確な射撃を加えるなどを行った。

②サイバー攻撃やウクライナ政府の国際的信用失墜などを目的にした宣伝工作をSNS等を通じて行うなどの広範な情報戦を展開

③ウクライナ国境沿いのロシア領内にロシア機甲部隊・砲兵部隊を配置して軍事的圧力かけハイブリッド作戦を補完

…とこのような感じです。

綿密かつ周到な準備を実施して、巧妙に戦っているという印象ですよね!極めて興味深い戦い方だと思いませんか?

 

湯浅陸上幕僚長は、「修親」2019年7月号巻頭言「新たな戦いにおける陸上自衛隊」に以下(抜粋)のように述べています…

「グレーゾーンの戦い」は、非軍事的手段・準軍事的手段が駆使され、平時とも有事ともつかない状態で進行する。デモや暴動、テロ、経済的圧力、報道を含む宣伝工作、サイバー攻撃、民兵や特殊部隊の非公然活動などが重層的に組み合わされ侵攻しようとする国を不安定化して社会を麻痺させ、相手が戦争と認識する前に反撃に意志と機会を奪ってしまう。

このため、グレーゾーンの段階で事態を適切にコントロールできるか否かは国家の運命を左右するが、それを担うのが陸上自衛隊である。
陸上自衛隊は、地域に配置された部隊をもって、また、迅速に部隊をる展開させ、国家の中枢機能を守り、重要インフラを防護して国家の機能を維持するとともに国民を守り切り事態をコントロールして敵の侵攻企図を破砕し、戦争抑止に全力を尽くすことになる。また、やむなく侵攻を受けた場合にも、反撃の基盤を確保する重要な任務を遂行することになるのである。

「新領域の戦い」では、宇宙・サイバー電磁波領域への対応が不可欠となる。敵は、専守防衛を基盤とする我が国の弱点を突き、サイバー・電磁波領域への戦いを駆使して自衛隊の戦力発揮を妨害し、奇襲により短期決戦を企図すると考えられる。

このため、緒戦においては、サイバー・電磁波領域における敵の侵攻をしのぎ、受動の不利を克服して戦力の大量損耗を回避し反撃の態勢を維持することが重要となる。さらに、統合・日米共同反撃の段階においては、サイバー・電磁波領域で優位に立ち、各種打撃力を主導的かつ効果的に集中することが作戦の成否を決する。

陸上自衛隊は、三〇大綱に基づき、サイバー・電磁波作戦の主体としてその戦力構築に努めているほか、長射程火力の開発等にも着手している。新領域の戦いはもちろんのこと、反撃段階においても重要な役割を果たすことが求められている。

陸上自衛隊は、今現在も国を守り国民を守る重要な役割を果たし続けているが、新たな戦いにおいても、陸上自衛隊の役割はますます大きくなってゆく。戦い方の変化や情勢・技術の変化に柔軟に対応しつつ、今後も引き続きその責務を果たしていかなければならない。

さて、それでは…概ね10年先ぐらいまでのこのような新たな戦いを鑑みたときに働きがいのあるお勧めの職種はどれでしょうか?

ひょっとすると、近い将来に宇宙・サイバー電磁波職種のようなものが新設されてそれが最もトレンドになっているかもしれませんよ!

…まあ、そこまではないにしても、ハイブリッド作戦のロシア軍の準備段階の行動を鑑みるに平素〜グレーゾーン段階における対応特に、情報収集と分析評価の適否が作戦の帰趨を決定づけるといっても過言ではない時代になってきたということですから、最も最近に職種化された「情報科職種」は、国家レベルの情報を扱う機関から部隊レベルまで、間違いなくクローズアップされると思いますし、サイバー電磁波領域で最も関連性があるのが「通信科職種」ですので、システム的なものを含めた通信科職種を有する部隊も今まで以上にクローズアップされてくることは間違いないと思いますよ!

…それぞれ両職種は、働きがいあるお勧め職種として注目度UPではないでしょうか!

 

もちろん、諸職種運用の要であり、特殊作戦部隊の核となる「普通科職種」、

情報収集能力と機動打撃力の骨幹戦力たる「機甲科職種」、

緊要な時期場所にに大量、広範かつ正確な火力を集中できる「特科(FA)職種」、

組織的な対空情報活動と航空機・ミサイル等への対空戦闘能力を有する「特科(AA)職種」、

ヘリ火力戦闘、空中偵察、物資輸送,指揮連絡等能力を有する「航空科職種」、

戦闘部隊を各種施設器材をもって前方から後方までの支援能力有する「施設科職種」、

各種化学器材をもって汚染地域を偵察、除染能力を有する「化学科職種」、

犯罪の捜査、警護、道路交通統制、犯罪の予防など部内秩序維持に寄与する「警務科職種」、

火器、車両、誘導武器、弾薬の補給整備等を行う「武器科職種」、

糧食、燃料、需品器材や被服の補給・整備・回収、給水、入浴支援を行う「需品科職種」、

特大型車両等による部隊等の輸送能力を有する「輸送科職種」、

患者の輸送や医療施設への後送、隊員の健康管理、防疫、衛生資材の補給整備を行う「衛生科職種」、

部隊の必要とする物資の調達等の会計業務を実施する「会計科職種」、

音楽演奏により隊員の士気を高揚する「音楽科職種」

…それぞれ各職種については、ハイブリッド戦、その中でもグレーゾーンの戦い地域に配置された部隊をもって、また、迅速に部隊を展開させ、国家の中枢機能を守り、重要インフラを防護して国家の機能を維持するとともに国民を守り切り、事態をコントロールして敵の侵攻企図を破砕し、戦争抑止に全力を尽くすため

…にそれぞれが一つとして欠けてはならない有効な機能として、これまでと同様に働きがいのあるお勧めの職種であることは言うまでもありませんよね!

私は現役時代、「特科(AA)職種」でした。

幹部候補生学校時代に、希望職種を5つ聞かれました。第三希望までに戦闘職種…「普通科」、「機甲科」、「特科」…から1つは入れることという条件がありました。

第一希望は「武器科職種」、第二希望は「特科(AA)職種」…以下は忘れてしまいました…。希望理由は、どちらかというと後方から支援したい気持ちが強かったからですかね…(笑)

…フタを開けると第二希望の「特科(AA)職種」でした。現代戦の緒戦は激烈な航空攻撃から…専守防衛のわが国では、これに耐えてこそ始めて生き残れる活路が開けるのだ…対空戦なき地上戦なし…と「特科(AA)職種」と決まった瞬間からそう心に決めました。

…以来、我が職種を誇りに思っておりますし、新しい戦いハイブリット戦の時代になっても色あせることはありません…もちろん働きがいのあるお勧めの職種であると思っていますよ!

・災害派遣、国際平和協力活動への対応の観点から

基本的に平時に実行される自衛隊の任務・行動…災害派遣、国際平和協力活動で働きがいのあるお勧めの職種はどれでしょうか?

多くの防衛・警備・災害隊区を担任し、諸職種運用の要である「普通科職種」は、災害派遣、国際平和協力活動に対応する機会か多く経験が豊富で実績も蓄積されていることから、国民の信頼が高く働きがいのあるお勧めの職種の上位であることは間違いないところですよね!

私は「特科(AA)職種」でしたが、幸か不幸か三十有余年の自衛官生活の中で、災害派遣は一度、東日本大震災のみでした。経験数が多い事のみが美徳ではない…微妙なところですが、職種の特性が大きく影響していることは間違いないと思いますよ。

その他、他職種からの視点でいうと平素の訓練で装備品等を駆使して積み上げてきた練度を平時の任務で活かすことのできる「施設科職種」、「航空科職種」、「衛生科職種」などは働きがいのあるお勧め職種だと思います。

私の経験した「特科(AA)職種」では流石にこれは経験しようにもできないわけです。これも職種の特性なんですよ…。

 

 

②自衛隊を退職してからの視点

私は自衛官を定年退職して数年がたちました。

退職者からみて、再就職上働きがいのあるお勧めの職種は?という視点もあるかと思いまして若干付言したいと思います。

自衛官になり指定された職種の教育訓練を通じて修得した知識や技能が、退官後の再就職先で活かせそうな…一粒で二度美味しくなるような働きがいのあるお勧めの職種は?ということになりますかね。

例えば、各自治体の防災監は、幹部自衛官退職者へのニーズが高い再就職先です。

退職後もこうした職を希望したい方ならば、災害派遣機会の比較的豊富な戦闘職種…「普通科職種」、「機甲科職種」、「特科職種」、「施設科職種」、「航空科職種」などがどちらかといえばお勧めだと思います。

また、「施設科職種」の各種施設器材の操縦士、「航空科職種」の操縦士、「衛生科職種」の看護士などは、現役時代の教育訓練で装備品等を駆使して積み上げてきた練度を退職後の再就職先で活かすことのできる可能性を有する働きがいのあるお勧めの職種ということができると思います。

私の場合は、定年退職後の再就職先は売り上げを具体的に求められる営業職でしたので、現役時の「特科(AA)職種」の教育訓練を通じて修得した知識や技能が、退官後の再就職先で活かすことのできるケースとはなりませんでした。

現役時代のある特定の職種の教育訓練で装備品等を駆使して積み上げてきた練度を退職後の再就職先で活かすことのできるケースというのはむしろレアケースであろうと思います。

したがって…どの職種に置かれても任務遂行に不可欠なその職種の意義・特性を理解して精進すれば、その人にとってその職種は働きがいあるお勧めのの職種になるに違いありませんよね…。

 

…以上、今回は、陸上自衛隊で働きがいあるお勧めの職種とは?と題して元自衛官が体験を通じて感じた2つの視点から説明させて頂きました。

如何でしたでしょうか? それではまた…。

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