自衛隊コロナ災害派遣感染者0の理由は?特殊部隊や予備自活動も気になる…
2021/05/08
新型コロナの感染拡大を受けて様々な任務に従事する自衛隊…
帰国チャーター便での検疫、集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』での船内対応、チャーター便帰国者の一時宿泊施設への物資搬送などなど…
ときには保菌者との濃厚接触が避けられない現場もあるわけですが、現時点で隊員の感染事例は海外からの帰国者1人のみです。いまだ任務中の接触を原因とする感染者は出ていませんよね。
特に医師や政府職員、検疫官の感染が相次いだクルーズ船の任務では、2700人に及ぶ多くの隊員が対応にあたったにもかかわらず、派遣隊員の感染者が0名で任務を完遂したのは称賛に値することではないかと思っております。
今回は、自衛隊コロナ災害派遣感染者0の理由は?特殊部隊や予備自活動も気になる…と題しましてまとめてみましたのでご覧いただければ幸いです。
自衛隊コロナ災害派遣…派遣隊員の感染者が0名の理由は?
先般の活動は、感染拡大防止に向けて緊急対応が必要との判断から、「自主派遣」の形で1月31日、「新型コロナウイルス感染症拡大の影響により帰国した邦人等に対し、救援活動を実施せよ」の内容で命令が発出されました。
続いて2月6日には「クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』における生活支援・医療支援」の活動が追加された形となりました。
さらに、2月13日には主として各地の受け入れ施設における活動に従事するため、医師・看護師等の有資格者の予備自衛官(最大約50名)の招集命令も発出されました。
3月10日の河野防衛大臣の記者会見では次の通りの発表が行われました。
「2月6日から3月1日にかけて、クルーズ船で延べ2700名の隊員により医療支援あるいは生活支援、消毒、輸送支援等を行った。
また、税務大学校等の一時宿泊施設では、チャーター便帰国者及びクルーズ船からの下船者に対する全ての経過観察を終え、3月8日付で活動を終了した。
延べ2200名で物資の配布、問診票の回収等の生活支援、医官、看護官等による回診や診療等の健康管理支援を行ってきた」…
そして3月15日には既に活動を終了していた全隊員のPCR検査及び経過観察を終了し…
これらの状況を踏まえて3月16日災害派遣撤終結の命令が発せられました。
長期にわたってコントロールの困難な新型コロナウイルスを相手にして最前線で活動してきたわけです。
この中にあって一人の感染者も出さなかったということに対しては見事というほかありませんよね。
では、特に医師や政府職員、検疫官の感染が相次いだクルーズ船の厳しい任務のなかで、2700人に及ぶ多くの隊員が対応にあたったにもかかわらず、派遣隊員の感染者が0名で任務を完遂し得た理由はどこにあったのでしょうか?
統合幕僚長 山崎幸二 陸将が、ダイヤモンドプリンセス号での災害派遣終了後の会見で次のような発言を簡潔にされました…。
「しっかりした防護基準を定め、現場で指揮官が徹底し、隊員が実行した。訓練の成果だと思う」
自衛隊における平素の訓練は、いわゆる教育訓練のみならず隊務全般を通じて組織としての任務達成を常に念頭に実施されています。
指揮官は全知全能、全人格を持って部隊、隊員を指揮・統御・管理し、任務達成のできる精強な部隊の育成に全力を傾注し…
部下隊員は、指揮官に全幅の信頼を置き命令に服従し部隊の任務達成のために身手期せずして行動できるよう個々の練度を向上に練磨しているわけです。
まさに、山崎統幕長のおっしゃられた日々の訓練の成果が派遣隊員の感染者を0にした根本にある事は間違いのないことのようです。
それでは、具体的な理由を項目ごとに紹介してみたいと思います。
① トップの明確な指針に基づく防護基準の設定・強化
河野防衛大臣は「自衛隊からは一人も感染者を出さない」という対策強化の明確な指針をだしました。
まさにこれがウイルス防護に可能な限り徹底的な対策を準備を可能にし、そしてそれを強化して活動をすることができたポイントだったと思います。
指揮官である防衛大臣の明確な指針…これなんですよ!
組織のトップが明確な指針を与えること…。
これは簡単なようで具現するのは実に難しい事なんです。…元自としての肌感覚でもありますよ…ww
この一つの明確な指針が、自衛隊制服のトップである統合幕僚長以下現場の派遣隊員に至るまで、与えられた任務の遂行においてウイルス防護に関してやるべき事項が極めてクリアーになったんですよ…。これは間違いありません。
② 現場の指揮官による徹底と隊員による基本的事項の確行(訓練の賜物)
一般的な災害派遣では、被害状況の概要を把握でき、関係省庁との任務分担のすり合わせが概ね決まっているというケースが多いといわれていますが…
今回のように敵が得体の知れないウイルス…でしかもその被害状況が全くつかめない状況のなかでの省庁間協力の枠組みからスタートした災害派遣は、何をどこまでやっていくかを現場の状況から迅速に判断して手を打っていく極めて難しい作戦だったはずです。
防衛省側のトップとして現場に入った町田審議官がそういった旨のお話をされていますよね。
当初は、クルーズ船内の無数のマッチ箱のような構造特性が障壁となって指揮の命脈である現地対策本部から船内各所の現場との通信が取れないという困難を、埠頭への移動基地局の開設と船内各所への中継装置の設置でクリアーするまで、船内にいる厚生労働省の幹部や船長と連絡をとるため、現地対策本部と感染のリスクの大きいクルーズ船との間を何度も行き来する必要に迫られたともいわれています。
自衛隊は、そのような経験のない事態に戦いを挑んでいたわけですが、そんな中にあっても、ウイルスからの防護だけは各業務に応じた明確な防護基準が徹底的に守られていたわけです。
何故守られたのか?
それは、統合幕僚長がおっしゃられた自衛隊による日頃の訓練の成果なんです。
自衛隊では、組織として任務を達成するための日頃の訓練の成果により現場指揮官による徹底指導と現場隊員一人一人の基本的事項の確行が身手期せずして行えるからに他なりません。
クルーズ船対応での具体的な行動を見てみましょう…
自衛隊の従事した業務は「船内の消毒」「診療や薬の配布」「薬の仕分け」 「検査で陽性となった患者の搬送」の4つに分かれていました。
それぞれの業務で独自の防護基準を設けていましたが、一部では厚生労働省の基準よりも厳しくしていたんです。
特に「船内の消毒」の業務では、厚生労働省が、マスクと手袋を使用する ことを基準にしていたのに対し、自衛隊は防護服を着た上で、手袋も万が一破れてもよいように2重にし、防護服とのつなぎ目を 粘着テープでふさいでいたんです。そして、靴カバーをはき、飛まつが目に入って感染しないようゴーグルを付けるという徹底ぶりだったわけです。
さらに、船内での活動を始める前には、感染症対策の知識がある東北方面衛生隊の看護官が、防護服の着用のしかたや脱ぎ方を機会教育(画像参照)したことにより、感染症対策知識の均一化が図られたといわれています。
今回の業務に従事する派遣隊員は、業務内容がそれぞれに異なるため感染症対策の知識に差異があるのは当然なのですが、隊員防護服の着用に慣れた隊員のアドバイスは特に効果的だったといわれています。
では、自衛隊が乗客との接触がない場所でも防護対策を強化したのはなぜなのでしょうか?
それは、大きく以下の2つの理由からです。
① 厚生労働省は、保健衛生をつかさどっているので、どういうことが防護につながるかなど基礎的知識も高い。しかしわれわれの大多数はそういったことに無縁な世界で生きているので『きちんとした防護』しか頼るものがないから
② 集団で活動するわれわれにとって、1人の感染は全体の感染になってしまう。
何かを触ったらすぐに消毒するとか、マスクの鼻にあたる部分を抑えて少しでもウイルスが入らないようにするとか基本の徹底だった。『救いに行く立場』で感染してしまったら任務を果たせないと考えたから
元陸自一佐で、イラク先遣隊長、駐屯地司令などを歴任した佐藤正久・自民党参院議員も
次のように言っていますよ…。
「今回の新型コロナのようにヒトに感染するウイルスに対応する場合、自衛隊は必ず防護服を着用します。手袋をして顔も覆い、靴カバーを付けるフル装備です。任務が長時間にわたる場合はさらにオムツを着用することもある。
防護服を脱ぐときは“外側”に触れないよう、2人一組で行ないます。一般的には、頭の部分から順番にお互いの防護服を外していき、最後にお互いの手袋を取るといった手順です。そこまで徹底しないと、感染を防ぐことはできません」
派遣隊員から感染者が出なかったのは、しっかりした防護基準を定め、現場で指揮官が徹底し隊員が実行した。日頃からの訓練の成果に他なりませんね。
特殊武器衛生隊や看護師等資格の予備自衛官の活動状況は如何に?
① 特殊武器衛生隊の活動状況
2月10 日、乗客全員にPCR検査を受けてもらうという方針が出ましたが、そこで追加で投入されたのが「対特殊武器衛生隊」です。
ウイルスや細菌を使った生物剤の同定(病原体の種類・型を特定すること)及び感染患者の応急治療を実施する陸上総隊隷下の衛生部隊(三宿駐屯地所在)です。
いわゆる生物兵器(剤)対応のスペシャルフォース(特殊部隊)なんですね。
今回の派遣では、検査は高齢者を優先し段階的に年齢を下げて行われ感染の有無を確認しました。医療支援に当たる隊員は当初の17 人から 最終的に51 人にまで増加して対応しました。
② 医師、看護師資格の予備自衛官の活動状況
2月13日には、主として各地の受け入れ施設における活動に従事するため、医師・看護師等の有資格者の予備自衛官(最大約50名)の招集命令が発出されました。
医師、看護師等の有資格者の予備自衛官招集は、今回が初めてなんです。予備自衛官に規則で災害招集任務が付与されたのは平成13年度です。
予備自衛官等に対する最初の災害招集は、ご承知の通り平成23(2011)年度の東日本大震災です。昨年(2019年)の台風19号などによる災害派遣に次いで今回が3回目となります。
今回招集された予備自衛官の内、看護官2名、語学要員1名が受け入れ医療機関にて活動にあたりました。
数は極めてすくないのですが、これは予備自衛官制度における歴史的な一歩なんです。
普段は、一般の病院等で仕事をされている医師や看護師の方々ですから、こうした招集がかかった場合に実際に本業をさておいて出頭していただける環境を作れるかが大きなハードルになっているはずなんです。
これに整理をつけて出動していただいている方々には、頭が下がるばかりです。
こうした実績を重ねながら、より出頭しやすい環境の制度的な整備にも役立出ていただきたいと思っております。
一般人が即応予備自衛官になるメリットとデメリット…合格率は?
自衛隊のコロナ災害派遣の最新状況
緊急事態宣言の発令が近く発表される可能性が高くなっており、自衛隊の災害派遣の長期化が予想されますが、まさに日頃の訓練の成果を遺憾なく発揮され、まさに健康に留意され任務遂行されんことを心より祈念申し上げます。
【お知らせ】
3 月 28 日、河野大臣は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、水際対策強化に係る災害派遣を命令しました。また第二回防衛省新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開催し、関係幹部間で認識を共有しました。防衛省・自衛隊は引き続き関係省庁と連携してしっかりと対応していきます pic.twitter.com/aQNJ3gWaUU— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) March 28, 2020
4月8日の緊急事態宣言発令に引き続き、4月17日には全国を対象として緊急事態宣言が拡大されました。自衛隊による最新のコロナ災害状況は以下の通りです。
自衛隊は、17日、成田、羽田、関空、中部の4空港で、水際対策強化に係る災害派遣として、検疫支援、輸送支援、宿泊支援を実施しています。
また、市中感染への対応として要請のあった兵庫県、埼玉県、岐阜県、北海道、石川県、鳥取県、福岡県で教育支援、宿泊支援を行っています。— 河野太郎 (@konotarogomame) April 17, 2020
自衛隊の皆様ありがとうございます!
個人レベルで感染防止に役に立つ基礎的情報はこちら…
2700人が参加した「ダイヤモンド・プリンセス号」を始めとした、コロナ関連の災害派遣で感染者ゼロの自衛隊
実際に派遣された隊員(東部方面衛生隊)が、自宅でも出来る自衛隊式感染症予防を動画で紹介!https://t.co/N57Q6Y88I1— 河野太郎 (@konotarogomame) April 16, 2020
コロナウイルス拡大防止のため、自らがやれることをしっかりと実行して少しでも自衛隊の活動、日本国家の活動に寄与できるようしっかりと自らを律して参りたいと思っております!
頑張れ自衛隊!がんばれ日本!
Solo Stove ソロストーブ レンジャー キット【正規品】
今回は、自衛隊コロナ災害派遣感染者0は何故?特殊部隊や予備自活動も気になる…と題してご覧いただきましたが如何だったでしょうか?
最後までご覧いただきましてありがとうございました。それではまた。